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表皮効果と誘電損失



1.表皮抵抗
高周波電流が導体を流れる時、導体内の相互インダクタンス によって導体の表面に近いところに多く流れ、中心付近にはあまり流れなくなる現象を表皮効果といい、抵抗値の増大を引き起します。この抵抗を表皮抵抗といいます。低周波では電流は導体を一様に流れるため直流抵抗値に等しい値を示しますが、周波数が上がり電流が導体表面近くを流れるようになると、抵抗値は周波数の 1/2乗に比例して増加していきます。

表皮抵抗の周波数特性


: 2本の並行導体の片側に電流を流すと、相互インダクタンスによりもう一方には逆向きの電流が流れます(逆起電力と言います)。1本の導体を複数の細かな導体の集合だと考えると、中心付近の導体はその周りの全周から逆起電力を受けますが、周辺にある導体は半周からしか、またコーナーにある導体は1/4周からしか逆起電力を受けません。従って最も逆起電力を受けにくいコーナー部に多くの電流が流れ、最も逆起電力を受ける中心付近にはあまり流れなくなります。

1MHz 10MHz 100MHz 1GHz
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抵抗=5.83Ω/m 抵抗=6.82Ω/m 抵抗=13.86Ω/m 抵抗=43.24Ω/m

下記3項のマイクロストリップ線路における電流分布の解析例
(周波数が高くなるに従い導体の表面近くに電流が集まります)



2.誘電損失
誘電体に交流電圧を加えたときに誘電体の電気分極が電場の変化に追従できなくなり、エネルギーの一部が熱になって損失する現象です。損失電力は周波数に比例します。

誘電損失の周波数特性


1MHz 10MHz 100MHz 1GHz
クリックすると拡大図を表示します
損失=0.0135mW/V^2/m 損失=0.135mW/V^2/m 損失=1.35mW/V^2/m 損失=13.5mW/V^2/m

下記3項のマイクロストリップ線路における誘電損失の解析例
(損失量は周波数に比例して増加しますが、損失の分布の割合は一定です)



3.表皮抵抗、誘電損失による波形の減衰
表皮抵抗、誘電損失が伝送線路を伝搬する信号波形にどのような影響を与えるのか、下図の断面を持つ導体を例に GreenExpress Professional で解析してSPICEモデルを作成し、波形を求めました。 特性インピーダンスは50Ωに合わせてあります。

解析例の断面図


長さ50cmのこの伝送線路に下図のパルス波形を入力し、10cm毎に波形の減衰を観測します。パルス幅は 2ns、1ns、0.5ns、0.2ns の4通り変化させています。また効果を比較するため、SPICEモデルは @直流抵抗のみの場合、A表皮抵抗を含む場合(誘電損失は含まない)、B表皮抵抗と誘電損失の両方を含む場合の3種類用意しました。

解析例の回路図


解析結果を下表に示します。それぞれの図には6本の波形が現れていますが、左から順に 0cm、10cm、20cm、30cm、40cm、50cm での波形を示しています。なお図の横軸は全て 1nS/Div です。
パルス幅(PW) @直流抵抗のみの場合 A表皮抵抗を含む場合 B表皮抵抗と誘電損失を含む場合
2ns パルス幅2ns、直流抵抗のみ パルス幅2ns、表皮抵抗含む パルス幅2ns、表皮抵抗と誘電損失含む
1ns パルス幅1ns、直流抵抗のみ パルス幅1ns、表皮抵抗含む パルス幅1ns、表皮抵抗と誘電損失含む
0.5ns パルス幅0.5ns、直流抵抗のみ パルス幅0.5ns、表皮抵抗含む パルス幅0.5ns、表皮抵抗と誘電損失含む
0.2ns パルス幅0.2ns、直流抵抗のみ パルス幅0.2ns、表皮抵抗含む パルス幅0.2ns、表皮抵抗と誘電損失含む
減衰量 パルス幅に関係なく、50cmの点で
約3%の減衰
50cmの点で、約9%(パルス幅2ns)〜
約19%(パルス幅0.2ns)の減衰
50cmの点で、約12%(パルス幅2ns)〜
約36%(パルス幅0.2ns)の減衰

誘電損失だけによる減衰は
約3%(=0.88/0.91、パルス幅2ns)〜
約21%(=0.64/0.81、パルス幅0.2ns)
       注) 横軸は全て 1ns/Div

この解析結果から、次のことが分ります。
  1. 高周波では表皮抵抗や誘電損による減衰が大きくなってきます。直流抵抗だけの回路モデルでは、高周波におけるそれらの影響を見落としてしまいます。
  2. パルス幅を2nsから1/10の0.2nsに減少させるとそれに伴い、表皮抵抗による減衰は9%から19%に約2倍強と緩やかに増加します。
  3. それに対して誘電損失による減衰は3%から21%に約7倍と、ほぼ周波数に比例して急激に増加していることが分かります。
  4. これらの特性は本ページのトップに記述されている1項、2項のグラフと合致しています。

4.アイパターン表示
上記3項では単一パルスの伝送波形を見ましたが、実際の連続パルスによる伝送波形をアイパターンで表示したものを下図に示します。SPICEモデルは表皮抵抗と誘電損失の両方を含み、線長は10cm、30cm、50cmの3通りです。 使用した評価パターンはPRBS9(Pseudo Random Binary Sequence、ビット長=9)です。図中の%表示は入力振幅に対する比率を示します。アイパターン表示により、振幅の減衰に加えタイミングの窓も視覚的に容易に認識できます。
パルス幅 伝送速度 10cm 30cm 50cm
2ns 500Mbps パルス幅2ns、10cmのアイパターン パルス幅2ns、30cmのアイパターン パルス幅2ns、50cmのアイパターン
1ns 1Gbps パルス幅1ns、10cmのアイパターン パルス幅1ns、30cmのアイパターン パルス幅1ns、50cmのアイパターン
0.5ns 2Gbps パルス幅0.5ns、10cmのアイパターン パルス幅0.5ns、30cmのアイパターン パルス幅0.5ns、50cmのアイパターン
0.2ns 5Gbps パルス幅0.2ns、10cmのアイパターン パルス幅0.2ns、30cmのアイパターン パルス幅0.2ns、50cmのアイパターン
       注)PRBS9では0または1が連続して現れるのは最長9ビットまでとなります。


5.減衰量の改善
更にこの解析例に対して、パルス幅が0.2nSでの波形の減衰を改善することを検討してみます。次の変更を施した場合の効果を解析で調べてみます。
  1. 絶縁層の厚さを変更。100μmから200μmへ厚くして信号線のキャパシタンス(ならびに誘電損失)を減少させると共にZoを高くする。
  2. 絶縁材料の変更。ガラスエポキシ(Er=4.7、tanδ=0.02)から誘電損の少ないガラスポリイミド(Er=4.2、tanδ=0.005)へ変更。
  現状
解析例の断面図
改善策1


絶縁層の厚さ変更
100μm  ⇒  200μm




改善策2


絶縁材料の変更
ガラスエポキシ ⇒ ガラスポリイミド
Er=4.7         Er=4.2
tanδ=0.02      tanδ=0.005


Zo 50Ω 72Ω 52Ω
キャパシ
タンス
122pF/m 83pF/m 110pF/m
誘電損失
@2.5GHz
33.6mW/V^2/m 22.6mW/V^2/m 7.5mW/V^2/m
表皮抵抗
@2.5GHz
68.3Ω/m 61.2Ω/m 68.3Ω/m


アイ
パターン


横軸は
100ps/Div
現状のアイパターン 改善策1のアイパターン 改善策2のアイパターン
伝送損失
@2.5GHz
-13.25dB/m
(誘電損失分: -7.37db/m)
(表皮抵抗分: -5.87dB/m)
-10.74dB/m
(誘電損失分: -7.05db/m)
(表皮抵抗分: -3.69dB/m)
-7.33dB/m
(誘電損失分: -1.73db/m)
(表皮抵抗分: -5.59dB/m)

改善策1では、誘電損失がキャパシタンスに比例して約2/3に減少しています(33.6mW/V^2/m⇒22.6mW/V^2/m)。しかしZoが50Ωから72Ωへ約1.4倍に高くなっているため伝送損失の誘電損失分は-7.37dB/mから-7.05dB/mとあまり変化は見られません。一方表皮抵抗は68.3Ω/mから61.2Ω/mと約1割程度しか改善していませんがZoが増加したことにより-5.87dB/mから-3.69dB/mと2.18dB/m(約3割/m)の改善として見えます。

改善策2では材料変更によりtanδが0.02から0.005へ1/4に減少したことにより、伝送損失の誘電損失分は-7.37dB/mから-1.73dB/mへ5.64dB/m改善できました。表皮抵抗は68.3Ω/mで変らず、伝送損失の表皮抵抗分にあまり変化は出ません。

このように GreenExpress Professional を用いてプリント板等の伝送線路をその断面構造や材料から解析することにより、プリント板製造前に伝送波形の品質を詳細に評価することができます。

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